あと3人、と馬鹿は言った――。
あぁ。
もう、私の中で、こいつの呼称は「馬鹿」と決まってしまったのである。
名前でなんか、呼んでやるものか。
「ねぇ、どりりん? あと3人、どうする?」
誰が「どりりん」だ、というわけなのであった。
そんな不愉快なアダ名で呼ばれているこっちが、なのにどうしてこっちばっかり、あっちを普通の名前で――。
いや。
「すにこ」というのは、まぁ、「普通の名前」ではないかもしれないけど(というか変な名前だけど)。
それでも、本名には違いあるまい。
――とにかく。
なのにどうしてこっちばっかり、名前で呼んでやらにゃならんのか。
そういうわけなのであった。
「不愉快?」
「……不愉快」
「だって貴女。名前――」
「『どりり・りり』。悪いか」
「『悪い』なんて言ってないじゃない」
「悪かったわね、どりり・りりで」
「言ってないって」
「いいや言ってる。目が言ってる」
「言ってないってば。私が言ってるのは」
「何よ」
「じゃあ、『どりりん』ってアダ名、別に間違ってないじゃない、ってこと」
「間違ってる」
「そう? いいと思うけど」
「良かないわよ」
「どうして」
「どうしても」
馬鹿は、ふぅ、とため息をついた。
「からかいの要素が含まれてるとか、凝りすぎてて恥ずかしいとか、そういうアダ名でなし……。
『どりり・りり』から『どりりん』なんて、アダ名の作り方としては、スタンダードなところじゃない?」
「――それ」
「『それ』?」
「その、スタンダードさがイヤ。
あんまり考えてない感じがする。それがイヤ」
すると馬鹿は――、
うなずいた。
「まぁ、その意見も判らなくもないけど。
安直だもんね。悪く言えば。
――実際、私の中では2秒で決まったアダ名だし」
認めるなよ。
そこで認めるなよ。
そして悪く言うなよ。わざわざ。
しかも2秒って何。
……どんどんイヤになってきたわい。
「イヤ?」
「イ・ヤ」
「……そっか……」
「そう」
「でも――」
「何よ」
「でも、やっぱりメディックは連れていきたいし……、3人とは言っても、正味あとふたりよね、どりりん?」
だからどうしてそこでフリダシに戻っちゃうのよ馬鹿。