紫「らーん」〈ぱんぱん、と手を叩く〉「藍、居ないの?」
藍〈台所の方から〉『……は、はいっ。ただいまっ』〈走ってくる。息を切らしながら〉「い、いかがなさいましたか」
紫「たいくつ」
藍「――は」
紫「ひま」
藍「はぁ」
紫〈扇子を開いて口元を隠しつつ、目だけで笑う〉「せっかくの夏休みなんだから、どこかに遊びに行きましょう」
藍(いつだってお休みじゃないか?)〈←言えない〉
紫「何か?」
藍「い、いえ」
紫「さて……どこに行こうかしら」〈そわそわ〉
藍「――あの、ゆかりさま」
紫「何?」
藍「もしかして、今すぐ出掛けるおつもりですか?」
紫「そうね。今すぐ行きたいわね」〈扇子を閉じ、ぴゅーっ、と振ってみせる〉「ぴゅーっ、って」
藍「準備とかしましょうよ」
紫「藍って、そういうタイプよね」
藍「はぁ」
紫「私は今、地図のない旅をしたいタイプなの」
藍「ははぁ」
紫「でも、本当にアテもないのはイヤだから、あの巫女とか魔女とかメイドとかのところに行こうかしら、というタイプね」
藍「はははぁ」
紫「じゃあ、行くから。お供なさい」〈今にも出発しようという気配〉
藍「……って、い、いや、いやいやいやいや。お待ちくださいっ」
紫「何よ」
藍「何よ、ではなくて……もうすぐお昼です」
紫「……」〈おなかを押さえる〉「そうね」
藍「今すぐ出掛けるとなると、行った先でまず、食べるところを捜すことになります」
紫「そう、ね。確かに」
藍「しかしあちらに、まともな食堂があるとは考えにくい。となれば、お昼を食べ損ねることになりかねません」
紫「それは……おなかが空くわね」
藍「その通りです。ですからせめて、お昼をお召し上がりになってからに」
紫「……もう、できているの? お昼ごはん」
藍「これからこしらえようか、というところだったのですが」
紫「それなら……」〈いいこと思いついた、という感じで、ぱんっ、と手を打つ〉「そうね。お弁当を作りなさい」
藍「は」
藍「――お、おべんとう?」
紫「持って行けば、食堂を捜さなくても済むでしょう?」
藍「持って行かなくても、こちらで食べて行けば済むのでは」
紫「判っていないわね貴女は。旅先で食べるのがいいんじゃない」
藍「し、しかし、荷物になりますし」
紫「貴女の荷物にはなっても、私の荷物にはならないのではなくて?」
藍「うぐ」
紫「決定」
藍「――そ、それに、何というかっ、その」
紫「決定、と言ったのが聞こえなかったかしら」
藍「い、いえ、そうではなくっ」
紫「じゃあ、何?」
藍「その」
藍「あ、あの、えぇと……」
藍「あ!」
藍「そ、そうです、そうですよ紫様っ」
紫「何が」
藍「げ、下界は夏だ、ということです。暑いです。お弁当などイタんでしまいます」〈もっともらしく肯く〉「いけません」
紫「……ふむ」〈とんっ、とんっ、と閉じた扇子で顎を叩く〉「それは――一理あるわね」
藍「えぇ、えぇ、そうですとも」
藍「――ですからおうちで食べてから行きましょう」〈ほっとする――が〉
紫「一理はあるけど……気に入らないわね」
藍〈冷や汗〉「な、何が」
紫「貴女のコトワリに動かされるのが」
藍「! そ、そんな!」
紫「何が何でも、うちでは食べたくなくなってきたわ」
藍「し――しかし、お弁当はダメですし、空腹を我慢しなくてはなりませんし……」
紫「私を誰だと思っているの?」
藍「え」
紫「私の名前を言ってごらんなさい。私の式神」
藍「や、やくもゆかり、さま……?」
紫「そう、八雲紫。――この八雲紫が、その程度の空腹にすら耐えられないとでも思って?」
藍(でしたら、私のコトワリにも耐えてくださいよっ)〈←言えない〉
――というわけで、
コミケ 66 にお出掛けします。
橙「おでかけ、おでかけ」
2004 年8月 15 日(日曜日)・コミケ3日目
西館第2ホール「あ」 06a 「無限夜桜同人誌出版部轟天社」
* 新刊「 Black out/BAROQUE Words 」 - A5 版 Leaf Key 中心二次創作小説本
* 新刊「東方対話片 04 The Fourth Loving Beat 」 - A5 版東方シリーズ二次創作対話形式・小説本
* 再版「東方対話片 03 The Progressed Third 」
* 再版「東方対話片 02r The Second Detonation 」
* 再版「東方対話片 01r The First Resort 」