DOWN TO HEAVy greEN 12

■ バード・ニーチェ

 僕たちは、一旦、街に戻ることにした。

 なかなか戦い慣れしてきたんじゃない?、って手応えを、感じられるようになったし。
 戦利品も、わりと手に入ってるし。

 それに……、
 得るものがあった分、失うものもあったし、ね。
 体力とか。
 疲れたー、ってこと。

 そうそう。
 僕たち、ね。
 実は、そうなるのを見越してたりするんだな。ちゃんと。これが。
 つまり、宿に予約を入れてあるってこと。
 泊まる部屋を確保してから、森にもぐってるんだよ、ってこと。

 だって……。
 ぐったりして帰ってきて、さ。
 もうダメ、寝る、寝るぞぅ、って宿に入って、さ。

 なのに、満室でした。

 ――なんてことになったら、大変だもんね。
 生還するつもりなら、生還した後のことも考えておかなきゃ、なんだよ。

 そういうわけで。
 せっかく取った部屋を無駄にしない、って意味でも、ここらで戻らなくちゃ……、の僕たちだった。

*

 街に戻ってくるまでは、何だか妙にテンションの高い僕たち、だったんだけど、到着して石畳を踏んだ途端、どっ、と疲れが押し寄せてきた僕たち、になっちゃった。

 もう、全員、宿に直行しようよー、倒れこみたいよー、って顔。

 手持ちの分で足りそうだったから、宿代の心配は、しなくても良さそうだったし、そうしても良かったんだけど……。

 ただ、ね。
 アイテム的に、ね。
 こんなの、ずっと持ち歩いてるのもどうかなぁ――っていうナマモノ的な戦利品も、中にはあったから。

 しかたない。
 これの処分だけ、先に済ませておこう。

 そういうわけで。
 もう少しだけ頑張ろうか、何とか……、の僕たちだった。

*

 お店に入ってみると、店主(?)のお姉さんがいた。

 ところで……。
 どうでもいいことなんだけどさ。

 このお姉さんを見るたびに、思うことがあるんだよ、僕。

 凄い格好してるなぁ、って。
 そう思うの。

 水着みたいなんだけど……、
 全然隠せてないんだよね。

 あふれてるっていうか。
 こぼれてるっていうか。

 凄いことになってるの。

 前から見ても凄い。
 けしからん!、って感じ。

 後ろから見ても凄い。
 いいのか!?、って感じ。

 あんな格好でいて、どうして平気なのかなぁ……。
 もしかして、このひと、許されるなら全裸でいたい、とか考えてる派だったりして……。

 うひゃー。
 怖ーい。

 ――え?

 あぁ……、うん。
 まぁ、そうなんだけどさ。
 僕が言えた義理じゃないんだけどさ。
 僕も、おへそとか、出してる方だし。

 とにかく、そういうお姉さんがいるお店に、僕たちは入った。

 って、こんな風に話を進めてると、なんか、いかがわしいお店に来たみたいに聞こえそう。
 あはは。
 違うよ。

 とにかくとにかく。
 入ったのね。僕たちとしては。

 そしたらお姉さん、僕たちを見て、目を丸くしてるの。

 でも、その反応――。
 僕たちにとっては、大して、意外なものじゃなかった。
 というのも、僕たちみんな、絶対、そういうことになるだろうなぁ、って予測、立ててたからね。
 いわゆる、想定の範囲内、ってやつ。

 ――お姉さんは、いらっしゃい、の代わりに、こう言った。
「治療院だったら、向こうだよ?」

 これに応えるのは、
 ――否定するのは、
 すにこの役目だった。

「いや、お店間違えたわけじゃないんです」

 何故って、すにこのせいだからね。
 そんなアドヴァイスを聞かされる展開に、持ち込まれるのは。

「……そう?」
 お姉さんってば、激しく疑わしげ。

 そりゃ、そうだよね。
 顔中に絆創膏、べったべった貼ってるひとに、そんなこと言われてもなぁ……、だよね。普通。

*

 僕たちは、戦利品を売り払う。
 これで、新しい武器やら防具やらを作れるようになるよー、って、お姉さんにすごく喜ばれちゃったりして、何だか照れくさかった。

*

 そして、
 僕たちは、宿屋に戻る。
 やっと……、って気分。

 とっといた大部屋に入って、
 5つのベッドに、適当にそれぞれ、どさーっ、って倒れこむ。

 クリスちゃんなんかは、そのまま動かなくなっちゃったね。

 すにこはさすがに、鎧がきゅうくつみたいで、横になったまま、もぞもぞ、って脱ごうとしてた。

 僕は――、
 すにこの逆。
 むしろ着た。
 着替えた。パジャマに。
 荷物から出してきて、もぞもぞ。

*

 誰も、口をきかなかった。

 僕は、眠くて眠くて。
 それで、きけなかった。

 みんなも、きっと、そう。

 だから、
 沈没。

 お買いものは、ゆっくり、また明日。
 ――そんなような、予定を立てておくことも、

 おやすみなさーい。
 ――そんなような、あいさつを交わすことも、

 今は、
 今だけは、
 サボらせてもらって。

                          (続く)